2012年3月28日の活動

狭山市駅西口駅前交番の開所式。
市内工業会社社長と会合。市内自動車工場の動向と、狭山市の工業政策について。
青年会議所理事長と意見交換。震災がれきについてなど。

セミナー『エネルギーから見た世界経済と国内製造業の展望』(飯田橋)。(以下、講演内容)

 

●講演:『エネルギーのイノベーションが日本経済の未来を開く』
アゴラ研究所 所長 池田 信夫氏 (著書『原子力危険神話の崩壊』)
 エネルギ-のビジネスの話を今日はしたい。
 エコノミスト紙『nuclear energy』で原発について報じられたが、安全性に問題は無い。
 核廃棄物処理は、ガラスなどに入れて埋めれば、技術的に問題ない。原発建設費の高騰は、安全規制強化の費用。
 原子力は、価格でLNG(シェールガス。原産:ロシア・アメリカ)に勝てない。東京都はガスタービンコンバインドサイクル(発電)を行う。
 現存する原発のコストは、1円/1kWh。再稼動しないと毎年4兆円以上の損失。
 原発を新設する電力会社はない。化石燃料に依存するリスクは大きい。
 ウランのほうが備蓄も効くので、エネルギーの価格変動にもリスクヘッジ出来る。石炭は、温暖化などで最悪。
 第4世代の原発といわれる、トリウムは日本でやろうとすれば20年はかかる。
 アメリカでこのほど認可されたSMRは、コストが安く、エネルギー省が推奨している。
 軽水炉は炉心溶融のリスクはゼロではない。
 最大のエネルギ-源は「節電」。夏場のピークの時間に合わせて発電所をつくっている。夏場のピーク時は、夜中に比べてほぼ倍くらいで、効率が悪い。25%くらい無駄なエネルギーをカット出来るのではないか。地味なようだが、ポテンシャルは大きい。
 脱原発で、風力は夢物語。向こう20年間でせいぜい5%くらいにしかならない。

 スマートグリッド、米国オバマ政権の公共事業。米国発電網は3千くらいあったが、ロスアンゼルスで大停電もあり、効率的にやろうとするもの。電圧の変動の問題では、半導体製造会社では電圧が1割も変動すると仕事にならない。
 ピーク課金。導入:ヨーロッパ(イタリア・スウェーデン、フィンランドでは間もなく)。アメリカでは6%くらい課金。今のメーターでは東電の職員が見に行っているので出来ない。時間帯別に課金を変えていく“スマートメーター”。設備投資資金不要で、電気代が減ったら、投資分をもらうやり方で導入。
 AMI(Advanced Metering Infrastructure)。通信システム。電力会社の為だけでなく、例えば、ユーザーの携帯端末に送って、携帯からスマートメーターにつながった空調などを切ったり出来る(オープンなインターネットではない)。
 日本のスマートメーターは、ガラパゴス型。経産省では指導しているが、通信も各電力会社バラバラで見切り発車しようとしている。ユーザーにデータを送るかどうかは未定。
 日本は節電の最先進国。インフラ産業は「ものづくり」が生かせる。サービス産業のグローバル化につながる。規制改革が新産業を生み出す。電力会社の売り上げ15兆円産業に、新企業が参入。NTTの電話料金は6兆円だが、通信産業は20兆円。
 電力自由化が必要条件。小口電力(50KW未満)の自由化。既存の電力会社と新規参入のウィンウィンの関係になる。通信も含めて新しい産業の創造を。

●講演:「”六重苦”からの脱却。国内製造業の復興の鍵」
ボストン コンサルティング グループ 日本代表 水越 豊氏
 エコノミスト紙『From summit to plummet』で、「銀座のアップル社の店はにぎわっているが、すぐ近くのソニーは閑古鳥」と報じられた。
 時価総額の変化、97年サムソンは日本メーカーの1/4,1/3だったが、今は日本メーカーを足しても、1/3,1/4。10日ほど前にも、日経産業新聞に同様な記事。
 リチウム電池、2000年9割が日本製だったが、今は50%を切る状況。
 鉱工業生産、日本は横ばいだが、アメリカは伸びている。中国に日本は倍近い差を付けられている。
 バブル崩壊以来20年間、日本は設備投資が伸びていない。
 新興国で日本企業がトップシェアを取っている企業が少ない。インド市場で、例えば進出したのはソニーのほうが早いが、LGに差を付けられている。日本はハイエンド製品しか出さず、ローエンドを敬遠したツケが出て来た。資金投入も大きな差が。成長率が高いので、投資をしていかないと、シェアが下がる。企業の成長の体感がスローになって来ている気がする。
 LGは幹部の現地化をすすめている。LG、ブラジルに異動を命じた社員に「ブラジル国籍をとって欲しい」と言ったのは本当の話らしい。韓国企業の多くは現地に原則5年だが、LG・サムソンは10年。帰った時自分のポストがどうなるか心配のしようがない。韓国人に雇われたいと思っている現地の人はどれくらいいるか、米国人より韓国人は、ディス・アドバンテージを負っている自覚があるから。
 笑い話でよく言われる話で、インド・中国担当事業部門は成長が社内で高いので誉められるが、シェアが落ちてきている。
 中国では、資生堂は、ローエンドに着手したロレアルに差をつけられた。
 トヨタ・キャノン・ソニー・パナソニック・資生堂・任天堂は、外国人役員はほとんどいない。よく言われる給料格差は、実はそん色ない。いつまでたっても昇給しない、責任あるポストに中々付けてもらえないので、嫌になる。「ガラスの天井」があって、現地人ではそこまでになってしまう。
 新興国企業は、世界市場のトップシェアメーカーが多い。
 グッドベイビー(中国ベビーカーメーカー)は、米国・EU・中国シェアトップ。開発者100人いない。営業マンが開発している。どういうものが売れているか、各国で見て本国に伝え、早く作れている。
 中国のビル建設の早さで有名なユーチューブ、30日でビル建設。「あんなインチキな」「耐震上問題が出る」とだけ思うかも知れない。
 しかし、トヨタのトヨペットクラウン(低燃費車)1959年モデルは、米国のハイウェイの坂を登れずに「メードイン ジャパンはいかにチープなのか」と報じられたが、その後10年で手強い競争相手となって成長した。
 日本のGDPあたりのCo2排出量は低い。スウェーデン・スイス0.15、ノルウェー0.19に次いで、日本0.22kg。
 日本のバイクメーカーが出始めた時、米国のハーレー社などは「あんなものは日本メーカーに作らせておけばいいんだ」と、それが70年代になって750㏄で太刀打ち出来なくなった。
 インドネシアでは、ユニチャームが生理用品などでダントツ。マスマーケットで大成功しているので、その気になれば出来ると感じた。
 10年後にはエコノミストで「日本メーカーの復権」という文字が躍っている事を祈念する。

●パネルディスカッション:「エネルギーからみた日本経済成長への提言」
パネリスト:アゴラ研究所 所長 池田 信夫氏
ボストン コンサルティング グループ 日本代表 水越 豊氏
モデレータ:(元NHKアナウンサー) 草野 満代氏

池田氏:
 エネルギー制約が今年も厳しいらしく、製造業をアジアに押し出してしまう効果が出てしまう。民主党政権は世論に対し、過剰に反応して、リップサービスが先行している。

 6重苦は本質的には1つの問題。政府・メディアが“アンチビジネス”だから。
 特に民主党は、労働組合出身者が多く、アンチビジネスにはっきり舵をきった。橋下徹さんなど新しい世代も、東京電力・大資本を悪者にする。
 「ちょっとぐらいGDPが落ちても」と、多くの皆さんが言っているが、それももう時間の問題。ガバナンスが無い。悪者をつくってワーワー騒ぐだけなのは、何とかしないと。
 日本は製造業で食えなくなると、何で残るのか。金融で食うようになるのは資本主義のコースであり、イギリスはそれで持ち直した。ところが日本の金融は機能していない。
 高齢者介護など、国際競争の影響を受けない、あまり給料の高くない産業が、マーケットとしては伸びていくが、日本経済を牽引するような産業ではない。エネルギーは新興国との競争を避ける産業になるが、携帯電話メーカーのようになるかも。
 9割は日本に残って仕事をしなければならないので、内需型のサービス業に移転しなければならなくなる。労働者にとっては明るい未来ではない。製造業は外に出て行くしかないのではないか。
 日本政府ですぐ出来るのは、法人税減税。タックス・コンペディション。ヨーロッパ諸国では談合している。
 日本は、特区をもっと大きく設定すべきでは。
 エルビーダメモリーの破綻で思う事。東芝に世界で初めてフラッシュメモリーを発明した人がいたが、その人は窓際で、東大に行った。部門長が年功序列の組織で、研究者をダメにする。組織が老朽化して、政治家・官僚が“年功序列”“終身雇用”を守ろうとする。民主党はアンチビジネスの政策。
 節電は日本人に向いている。
 ケース バイ ケースだが、株主価値を見直したほうがいいのではないか。現場に任せて、現場の強さを引き出すべき。
 『失敗の本質』-日本軍の兵士は世界で一番優秀で、将校は世界で一番劣る。株主からのプレッシャーが弱い。従業員は利益を上げる道具という、株主至上主義の全てがいいとは言わないが。
 日本企業は、経営者・人を変えろ。今のままでは、調整型の社長しか出て来ない。
 民主党は、東電に1兆円投資するなど、企業がつぶれるのを恐れる。個人ベースの世界に転換せざるを得ないのではないか。

水越氏:
 エネルギー制約が直接的に大きく影響するメーカーは限られる。震災前からメーカーの競争力が無くなっていた。政府・メディアの動きを見て、いい加減見切りをつけたくなったのは大きいのでないか。

 中長期に日本がどう変革できるか。今のままで行くとかなり厳しい。特に、ものづくり。製品をどこでつくっていくのがいいか、税金高い、規制が色々ある、雇用も制限があるのでは限界がある。反転できるか。少子化解消、移民・労働者受け入れに舵をきるべき。法令による規制だけでなく、メーカー同士の自主規制や、農業では農協なども。
 企業はもともと手かせ足かせを、かまされて来て、国際市場で勝ち残って来たが、新しい勢力が出て来ている中で、益々足かせが増えそう。本格的な第2の空洞化が始まっている。政治家・官僚とメディアしか残らないのではないか。
 シンガポールは、賃金が安いから企業進出が進んでいる訳ではない。シンガポールに工場を作ったほうが利益が出るようになっている。シンガポールでは、役人が企業に節税のアドバイス・売込みに来る。外国企業が日本に来たくなるようにしないと、日本の空洞化は避けれられないのではないか。
 日本企業は、利益率が高くない為、投資の原資を持っていない。赤字でなければ事業を切らなかった。既存事業の収益性を上げていかなければ。事業の再構築を。コストにもう1回フォーカスして。コストを半分・1/4にしようとする発想を。まったく発想を変えなければ。10,20%のコスト削減ではなく。お題を与えられると、日本のエンジニアは見つける。
 レイヤーマスターと呼ばれている、高い特定の技術・品質は、勝ち馬。
 投資規模・ネットワーク・コストで勝てる分野はどこか徹底的に考えたほうがいい。国際競争に備えての企業の統合を。
 60年代と決定的に違う事は、60年代は日本より人口が多かったのはアメリカだけ。ホームマーケットを持っている国ではなくなっている。思い切った投資に対するリスクを感じなかった。家庭は電化製品を月賦で買っていた。
 つい数年前は、中国のこの会社は簡単に買収出来たが、今は逆に買収されかねない状況。考えるなら今。時間はどんどん無くなって来ている。
 ものづくり企業はもっと声をあげるべき。声をあげると、たたかれやすいが、今声を上げなければ立ち上がれない。

草野氏:
 変えなきゃと思わないと変わらない。

 ニュースから離れて5年。視聴者目線に気づく。影響の大きさを感じる。
 コミニュケーションロスでなく、コミニュケーションデスが多いような気がする。

セミナー終了後、水越さんに挨拶。
調査。インクルーシブ教育・新エネルギー・防災対策。

 テレビ朝日『報道ステーション』で、電力料金の値上げについて上田知事・横浜市の発言を見ました(フジテレビ ニュース映像NHKニュース上田知事HPコメント)。素晴らしいと思いました。
 東京電力への公的資金投入額は、3兆5千億円規模になる見通しとの事(3月29日現在)。

埼玉県から電気料金値上げについて企業に向けて出した文書を添付します。

 

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