2012年7月10日の活動

県議会会派、防災プロジェクトチーム。
 講師:東京大学生産技術研究所・都市基盤安全工学国際研究センター長 目黒公郎教授。著書「間違いだらけの地震対策」。(以下、講演内容)

・耐震化のモチベーションを高める為の制度設計
 防災対策は“スケール感”が無いと解決策にならない。M(マグニチュード)8クラスはこれから4,5回起きる。M7は40~50回起きる。首都直下地震被害想定、全壊200万棟、経済被害200兆円(東日本大震災被害額17兆円。日本のGDPは500兆円)。GDP比、首都直下地震被害額22%、南海大地震16%、合わせてGDPの4割になる。関東大震災当時は、他国に与える影響が今よりはるかに小さかった。
 耐震補強を進めるには補助金額を上げればいいのではない。
 まずは、地震対策の重要性の理解不足対策を。補助金制度は予算上無理がある。
 耐震化のキーワード『いい場所に、いいものをつくって、よくメンテナンスして、長く使う』
 行政によるリバース・モーゲージ(自宅を担保にした制度。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放す事なく資金を確保する為の手段)が必要。
 耐震改修者による積み立て制度の創設を。耐震診断の診断法が信用されていないので、バックアップする仕組みを。1回工事を行えば終わりの悪徳業者が参入出来ない仕組み。耐震に努力した人が報われる仕組み。
 生命保険・土地を担保に耐震工事のお金を借りる制度を。

 阪神大震災の教訓が活きていない。風に耐えるには重い屋根のほうがいいが、地震に重さは不利。1981年以前の建物は、現在1150万戸。
 耐震化率の向上は、脆弱建物の減少ではない。耐震化率の能率を上げるには、耐震性の高い集合住宅を造る。
 活断層上の幅400mに住んでいる国民は289万人(国土の2.3%)。
 阪神大震災時、神戸市内の火災は109件だった。(5時46分に地震発生)午前6時までに53件出火。家が壊れないと、火事は出ない。
 焼死のうち、逃げられずに一酸化炭素中毒で亡くなったのは死者数の12.2%、高度焼損死は3.2%。
 食料の備蓄を行政がやるのはムダ。

 津波は(周期が長いので)力が減衰しない。地震動の高周波の波は減衰する。
 高層ビルは、往復6m幅で4秒間隔で揺れる。3m幅以上揺れる実験の振動台は無い。
 200キロの家具が倒れる時の力は1トンを超える。
 インドネシアのバンダアチェは、津波後、街を2.5キロセットバックした。
 スマトラ地震で、象は1頭も死んでいないのは、象は津波が引き起こす低周波をずっと聞かされていたからなので、低周波を察知するブイの設置を。
 津波は時速720キロの速さで、地球の裏側からも来る。
 釜石の堤防はムダだったと報道されているが、6分間の時間稼ぎと、高さを6割に軽減させるなど、津波の力を落とせた。
 津波後、まちを元通りに戻す復興でなく、経済的にやっていけるように変更を。
 早い復興は、地元経済の為にならない。阪神大震災で復興が早かったと言われたが、地元業者は10年分の仕事が他地域に取られたと思った。
 震災直後、TVでCMは自粛せず、経済を回す為にやるべきだった。CM経費の何%かを被災地支援に回すとすればいい。

・埼玉県の防災対策を考える上で重要な事
 災害時、県単位で対応出来ないと、総理官邸が担当になるが、ギャップが大きく、対応が必要。
 被災家屋数と他市からの職員支援の関係を見ると、多くの家屋が被災している市町村に、応援がそれ程入っておらず、それ程被災していない地域に応援が集中している。首都直下地震時は、これが機能しないと、まずい。
 防災マニュアルを事前に利用する訓練があまりされていない。災害時、理想通り出来ない事を想定した代替案を記述せよ。マニュアルにさえ従っていればいいというのでなく、災害時に行う事に個人は責任は問われないとしなければ。
 災害時、行政は部署別の仕事量の平準化を。
 健常者は災害弱者になり得ないのではなく、自分自身がケガをしたり、眼鏡を失うかも知れないから潜在的災害弱者である事の自覚を(以上、勉強会記録)。

勉強会終了後も、先生に個人的にお話を伺いました。
県庁で政策調査(終電で帰宅)。