【埼玉から一番近い所に原発のある東海村 村長さんの話】
茨城県東海村役場 視察。
村上達也 村長さんのお話を2時間10分伺いました。東海村役場は原発から3km。(以下町長談)
村上村長の近著には『東海村・村長の「脱原発論」』(集英社)がある(視察後、早速購入)。
東日本大震災の津波で、東海第2・女川・福島第2原発の15基は、間一髪だった。
震源地があと100km南だったら、ここが危なかった。
東海第2原発の防潮堤は6.1mで、ここに来た津波は5.4mだった。電源1台が停止。冷温停止に苦労した。主に手動で140回圧力を抜いた(ベント)。故障したらアウトだった。3月13日以降に私はそれを知った。
日本で1番、住宅密集地域にある東海第2原発(東海村役場から望む)。
東海第2原発から10km圏には人口30万人弱が住んでいる。20km圏は75万人で、水戸・日立市は全部入る。30km圏だと100万人。東京まで110kmだが、実際には100kmでも危ない。100万人が避難する所なんてどこにも無い。
最も恐ろしかったのは、福島第1原発の4号機。工事のヘマがあったから救われた。震災時、予定では使用済み核燃料の水は抜いてあるはずだった。
私は覚悟していた。3月15日に原発メーカーの専門家が、4号機の使用済み燃料プールの危険性について教えてくれた。誰にも言わなかった。それがダメだと思ったら避難。たぶん東京も駄目だっただろう。切迫した状況だった。
原発は、原理も原則も何もない、金の為なら何でもやる。
人口100万人もいる所に、安全神話がなければ原発が出来る訳もない。アメリカは人口が少ない地域=ノン ポピュレーション ゾーンに建てている。
日本は原発を持つ資格が無い。
エネルギーの安全保障を言って来た国。
原発推進の邪魔者は、消していく。推進一辺倒の組織体制。
人的に引き起こした事故のコントロールは難しい。
電力会社は地域独占体制。
原発を立地に関係なく、どこもかしこも作れる所は作っていく。
浜岡みたいに東海地震の震源地で、なおかつ人口の多い所に建てて平然としている。
都合の悪い事は日本では起こらない事にしている。
東日本大震災前年の1月17日、ロス地震で高速道路が落ちたが、「日本では起きない。ああいう工法は日本では取らない」。
スリーマイル・チェルノブイリ事故の時も、「日本とは炉型が違う。日本とは技術者が違い、モラルが低い」。
第2次大戦の時と同じ。「アメリカ人は個人主義、我々は大和魂がある」。
科学的な精神に欠けた国。論理的思考能力が欠ける。戦争もそうだった。
手工芸など技術は匠な民族。
東海第2原発のPAZ(事故発生時、即時避難区域)5km圏内には8万人。福島は20kmで8万人。
原子力防災計画は、ごまかし。「過酷事故は起きない。住民避難をやる必要はない」のが根底。賠償も出来ない。
福島原発事故で、米国は日本国内にいる国民を50マイル・80km圏外に退去。フランスは日本から退去を。ドイツは大阪以西に避難を指示した。
人命軽視・人権無視。日本政府はパニックを恐れ、情報を隠した。福島県庁も。
県議の皆さんに言いたい。県庁は、住民を守らない。県庁職員は上・国を見る。住民を守るのは、市町村。職員の違いはそこにある。
県庁職員は、国の役人以上に秘密を守ろうとする。お役人様になってしまっている。福島県庁は、スピーディ・放射線量を隠した。お上が怖い。国策でやっている空気。口が重くなる。
非国民扱いされる。市民も口が重くなる。
国防もそう。
一昨年6月18日の海江田経済産業大臣の安全宣言は、おかしい。
この国で原発なんか持っちゃいかん。
スリーマイルは未だに原子炉の燃料棒の取出しが出来ない。
汚染水問題。福島原発は阿武隈山脈から地下水が、とうとうと流れ込んで来る。
日本は原発立地には不適。
核廃棄物を埋められると思っている非科学的さに驚く。
ドイツは岩塩を掘ったら底が移動していた。
日本はロシア・ウクライナ・ベラルーシよりも数値が高い所に住まわせている。福島市・郡山市は、それらの国では住んではいけない地域になっている。
安倍政権は、国益・国威優先しか出て来ない。
原発は巨大な権力組織。
政策転換なんか出来ない。ひとつの方向に走り出すと、その組織が力を持つ。
A級戦犯者は全員が「戦争に反対だった」と言った。ではなぜ戦争が続いて来たのか。その後、負けだしても転換出来ない。沖縄を捨石にし、それでも本土決戦で竹やり。米兵だって武力の違いに涙流しながら撃つようなもの。
転換は安倍政権になったら特に出来ない。もう1回事故が起きないと分からない。
洗脳する軍部みたいなもの。みんな物腰はやわらかで、丁寧だが、これが危ない。
権威が一番落ちたのが学者。
既得権益にしばられる。政治家・知事の首さえ飛ぶ。大学のトップクラスは電力会社に就職する。
原発は福の神だが、どっぷり依存したら先は無い。
全国1719市町村中、原発は23市町村にある。
原発があると、そこのまちの産業は全て原発関連になっていく。納入業者・宿屋・タクシー・飲み屋。既存の産業が消えていく。農業・林業なども消えていく。雇ってくれるから。原発に依存した産業になっていく。
敦賀市・越前市は人口7万人。工業生産出荷高では越前市が3、4倍。なぜ敦賀市が五分五分でやれるか。原発があるから。
東海村と新潟県妙高市は同じ人口3万8千人。工業生産出荷高は新潟県妙高市が3倍。原発がなければ、別な産業が出来る。まさに依存体質。
リニア・新幹線・高速道路建設はおかしい。昔は人力だから10里おきに宿場町が出来た。地方は効率・スピードに乗ってはいけない。原発はその代表選手。10年で国から800億円来る。
エネルギー政策はドイツの勝ち、フランスの負け。
フランスは原発に80%以上依存。しかし、フランス人は事故が起きれば、街頭に出て来るだろう。
フランスは陸軍大国で、マジノ線を作れば、ドイツ軍は攻め込めないと思っていたが、ドイツ軍は超えられないと思われていたアルデンヌの森を超え、マジノ線の後方に現れ、フランス軍は壊滅。
原発が無いとやっていけないと思っている。
東海村の半分以上の住民は、原発があったら危ないと思っている。
原発の是非は、東海村だけでは決められない。100万人の命と生活に責任が持てるか。周辺の人達が黙っていやしない。
<茨城新聞アンケート調査>再稼動NOが59.5%。女性は64%がNO。
22自治体、再稼動NOの請願を採択。
東海第2原発は、運転開始から35年。
防災対策を行った後、寿命の40年までは1年運転するかしないか。
廃炉工事で、雇用はある程度残る。
原発は13ヶ月に1回の定期検査で1千名従業員がやって来る。そういう人の宿・居酒屋・タクシーが金になる。
原電で東海村民の職員は150人。全体では350人。
下請けで村民は350人くらい。下請け全部で500人弱。
東海原発の固定資産税10億円・電源交付金5億円。東海村の税収のうちの15、6%を占める。
旅館に「外国人を泊められるようにしてくれ」と言ってもやらない。食えるから余計な事と。
電源交付金のあり方を変えていかなければ。丸々消える訳ではない。
<質問>原発が必要だと思っている方には何と言われますか?
「福島を見て。汚染水問題をどうする。福島に戻れますか?」と言う。
私が原子力発電に疑問を持つようになったのは、東海村JCO臨界事故(1999年、事故被曝により2人死亡。村長として現職だった。ウィキペディア)の時。
JCO事故の真相は、歪曲されている。“バケツとひしゃく”が問題なのではない。バケツと柄杓のせいにして矮小化した。量をためたから臨界が起きた。質量制限の基準がある。1バッジ2.4と言う縛りがある。7バッジ以上だと臨界が起きると分かっていた。
事故が起きたのは、国策だから。
臨界事故が起きると考えてなかった。
検査に国の監督官庁が入っていない。監督官庁は無いに等しい状況だった。
原子力防災法を作れと要求していたが、事故は起きないものと作らなかった。
刑事責任で終らせようとしていた。
科学技術庁(当時)が作成した原子力防災指針で、一番過酷な事故を想定したのが“仮想事故”。脚注に「これは仮想事故だから、具体的な対応は必要としない」と書かれていた。村も「住民避難は必要としない」としていた。
保険会社が原発の保険を付けられない。
原発事故の賠償責任額は、当初200億円だったか。臨界事故後、600億円に。ウイーン条約では1000億円。
賠償が出来ない・保険がきかないのを生産していい訳が無い。
人類は原発を制御できない。自然の摂理は超えられない。
原発は地域主権の疫病神。
原発政策は地方自治の根幹に関わる。憲法問題にも関わって来ているので、今後も発言していく。
福島は植民地のように、差別されている。
水俣の元市長も「水俣だから起きたんだ」と言われたと言っていた。
3.11後の8月、電源所在地市町村長会役員会で、井戸川 福島県双葉町長(当時)は「私は国境はいらないと思う。国境があるから軍隊が出来る。軍隊の最大の敵は国民である」と言った。
言い換えれば「原発は国策。その最大の敵は国民であり、地域住民である」という事だ。
井戸川町長は「会津に行ったら、原発は無いが、同じような公共施設はあった。原発が無くてもいいんだなと思った」と。
原発にしがみつくのは、犯罪的。自分の所だけ豊かになろうとするのは。
(以上)